Dogenzaka Jul 2008
関西テレビ開局50周年記念、パリ国立オペラ初来日公演のチケットを頂いた。とてもありがたいこと、生きてて良かった。神戸を皮切りに東京公演も『あなたを揺さぶる4つの愛』のテーマのもと3つのプログラムが上演された。Aプロは『トリスタンとイゾルデ』、Bプロは『消えた男の日記』と『青ひげ公の城』、Cプロはデュカスの『アリアーヌと青ひげ』。
4つの愛、そしてその演目、そのまんまなようだがそこが今風なのだろうか?今回BかCプロが観たいところであるが頂いたチケットはBプロだった。ヤナーチェクとバルトークの二本立てで男女の関係の対比で組まれたようだ。
パリ国立オペラの総監督はジェラール・モルティエ、この人はザルツブルク音楽祭の総監督であったし、何かと今風を打ち出してきた人のようだ。先のザルツブルク音楽祭日本公演『フィガロの結婚』と共通したにおいがする。温度が低く、発泡水のような感じといったら良いだろうか。本当にかの地でうけているのかは分からない感じがする。なんか80年代初期の流行りの焼き直しのようだし。まあ先入観はあまり持たない方が良いけど。ヤナーチェクの『消えた男の日記』は初のオペラ化だそうで、はじめて目にするものだったが良かった。演劇、パントマイムやダンスの良い部分を取り入れた演出は斬新さはないが、平明で充実した感じがあった。まあ西洋的である。能などからヒントを得ると幽玄な『消えた男の日記』が出来るのかと思う。『青ひげ公の城』は多重のスクリーン使って映像を投影したりとビジュアルに凝ったようだがその中身は平凡な出来だったと感じた。スペインの演劇集団ラ・フラ・デルス・バウスは両作品の違いから演出に対比をつけようとしたばかりに、両作品の違いの本質からかえって遠ざかったしまったようだ。『トリスタン』はピーター・セラーズ演出で、ビル・ビィオラというビデオアーティストを起用しているので、映像という点では見比べてみたいところだが、強い映像にオペラ自体が振り回されるのはどうなのかと思う。今回の本命はやはりデュカスの『アリアーヌと青ひげ』だったのか。なんて罰当たりな!
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Chateau Mouton Rothschild Jul 2008
近世のヨーロッパ、その中央を旅するような気持ちで楽しく読めたジャネット・グリーソンの『マイセン―秘法に憑かれた男たち』。中国や日本など東洋の磁器と同等の焼き方が発見され、絵付けが施されたマイセンは巨大産業となり、続く荘厳な彫刻装飾で頂上を極める。そして秘法が売られ独占が崩れヨーロッパに磁器が広まる。しかし本著はこうした史実を生み出す近世という時代を生きる個性的な君主と名工たちの人間ドラマに焦点があるところが面白い。また面白く読みながらドイツの原形である小国家の乱立した東フランク王国の地域の歴史の一端に触れる事が出来るのだった。
そして『マイセン』から時代を近代にして何か良い本はないかと待っていたのだった。
ロスチャイルド(ロートシルト)ドイツ語で赤い標識の意は、十八世紀半ばフランクフルトにあったユダヤ人のゲットーから類い稀なる才覚と揺るぎない家族の絆によって金融界の頂点へ上り詰め、やがてヨーロッパ社会と世界経済の支配者として君臨した一族の家名だ。
日本経済新聞出版社刊、ヨアヒム・クルツ著の『ロスチャイルド家と最高のワイン』はお祭り騒ぎのワイン本ではない。世界にその名を轟かせているボルドーのアイコンともいえる二つのロートシルト。ラフィット・ロートシルトとムートン・ロートシルト、このふたつのポイヤックの一級シャトーを所有するロスチャイルド分家について書かれた本ではあるが、全体の半分近くはロスチャイルド家の歴史にページを割いている。本著では偉大なシャトーが単に畑だけでは出来ないことを、ロスチャイルド家の特徴と二つのユニークな分家とその関係において描き出している。クルツは「ロスチャイルド家の金融支配は時代とともに薄れていくが二つのボルドーワインの名声は増すばかりである。このことがロスチャイルド家の名と偉大な歴史を今日の人々に伝える。同家が生み出すワインのすごさはともに排他性と熾烈な競争のたまものである。」と述べる。排他性と競争とは、ユダヤのこの偉大なファミリーの祖であるマイヤー・アムシェルの哲学であることが本著から知る事が出来る。そしてあとひとつは、秘密主義だそうだ。
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SHM-CD Jul 2008
今年の春頃からSHM-CDというものが出ている。業界の両雄、ユニバーサルミュージックと日本ビクターが共同開発したものでSuper High Material CDという。液晶パネル用のポリカーボネート樹脂を採用しているそうだ。前からゴールドディスク等は存在していたので、全く同じとは言えないがディスクに注目した点では近いし、いずれにせよ商業的な臭いが強い商品である。CD、HDCD、DVDA、SACDなど、12インチで携帯に便利な(どれも当初から音質が良いと宣伝しているが)この兄弟メディア自体とメディア音楽産業全体の不振によって、あの手この手の商品が次々に市場に投入される。余裕があるなら一時踊らされるのも面白いが、うたい文句ほどのものがあることはないようだ。レコードに変わってCDというメディアが誕生、その頃から社会も急速に変化し、今日音楽というもの自体の在り方が違うなかで、微細な高音質化に励み収益を上げようとする様は、中世の王侯貴族たちのよう。
上にあるのはユニバーサルミュージックから限定発売された、同マスタリングのSHM-CDとCDの2枚組カップリング・サンプラー。ポップ、ロックのコンピレーションなのだが選曲が面白いのと適正価格なので購入した。CDと聴き比べてみよ、という企画なので素直に試す。だがうちにはあいにくCD Playerがないので、いったん双方ともiTunesに取り込んだ。このとき読み込み方法はAIFF エンコーダ、44.100kHz、16ビット、オーディオCDの読み込み時にエラーの訂正を使用している。つまり非圧縮でオーディオCDのままのデジタル・データをコピーし、これをiPodに同期させ聴くことにした。
Record Jul 2008
このようにしてiPodから聴くとCD Playerで聴くより好ましい。CD Playerで聴くように単に引き延ばされたようなまとまりのない音にはならないから不思議だ。結果SHM-CDは確かに張りのある音がする、対してCDは少し萎んだような感じに聴こえる。SHM-CDのものは生き生きとしていると表現しても良いかもしれない。フェアポート・コンヴェンションの『時の流れを誰が知る』が選曲されていたのでオリジナル初盤と聴き比べることにした。やはりCDよりSHM-CDが良いが、比べなければどちらでもいいような気さえする。オリジナル・アナログ盤のイメージへ近づけるようなマスタリングがほどこされていると感じる。しかしアイランド・レコーズのオリジナル初盤はその遥かに上をいく。針を刺したらはじけそうな張りとみずみずしさ、抑揚と諧調の幅と描きかたの自然さ、音にではなく音楽に生命感があるなど、マスタリングや小手先の仕様変更では埋められない溝が依然横たわっていると感じた。今回も宣伝ほど新仕様のSHM-CDにアドバンテージはないように思えるが。
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Yakumo Jul 2008
今日7月22日は二十四節気の大暑(たいしょ)。ちなみに来年の大暑は23日になるみたい。二十四節気では5月6日頃の立夏(四月節)から、8月8日頃の立秋(七月節)の前日までが夏の区分となる。二十四節気はかなり古くしかも黄河地方で出来たから、梅雨のある日本とは違いがある。また地球温暖化といわれる昨今、涼しくなる秋の訪れがとくに遅く、秋雨が台風の猛威へと変わったようだ。亜熱帯的な様相が濃厚で、二十四節気の風情から現実は離れるばかりだ。しかし二十四節気の区分は実に良く出来ていると思う。これは春・夏・秋・冬というより、春に向かう・夏に向かう・秋に向かう・冬に向かうとするものだからだ。たしかに8月8日頃の立秋の時分は最も暑い、が季節をひと月だけ先取りしていると思えば良い。秋とは暑さのピークから冬の到来である立冬(11月7日頃)までと定義するのは、ある意味とても現代的な考えではないだろうか?それはまさに季節ビジネスと符合する。7月いっぱいで夏物のセールを終えて、立秋からはさっさと秋物を並べるというのが粋で格好が良いと、頭では思うのだけど…。
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とくに先のメンチカツレツには苦戦した。100KB 未満に圧縮すると挽き肉がいたんだような肉質と色になってしまうのだ。こういう絵は重いようだ。結局妥協してモノクロにした。
JUGEM Desktop を使うと flickr の画像を読みにいくようになるので、根本的にこの問題からフリーとなった。
はじめて買ってもらったレコードの一枚は、ザ・フォーク・クルセダーズの『帰って来たヨッパライ』のEPレコードだった。小遣いで買うようになったのは小学五年頃だろうか、AMERICAの『名前のない馬』だったと思う。1972 - 1973年とは横井庄一さんがグアム島で発見され、札幌オリンピック、浅間山荘事件、沖縄の日本復帰、ウォーター・ゲート事件、ミュンヘンオリンピック、日中国交正常化、ヴェトナム和平協定調印、オイルショックと、まさに激動の時代といえよう。プログレッシブ・ロックが頂点に達し、Pink Floyd の歴史的アルバム『狂気』が生まれる。またその少し前には Carole King が70年代を代表するアルバム『つづれ織り』をリリースしている。ロンドンではグラム・ロックの風が吹いているし、荒井由実はファースト・アルバム『ひこうき雲』を発表した。この時代に生まれた大好きな音楽を少しばかり注意深く聴くためにぼくはオーディオの調整と初版のレコードを収集している。レコードにも初版と重版とがあり、それらは『同じものである』ということはない。初版にはない劣化が以降のものにはある。その劣化によって音楽性が損なわれるのであれば商品として成り立たない。しかし聴くとその違いの大きさに誰もが驚くのである。
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週末から95回"Tour de France 2008"がはじまった。昨年からJ-SPORTのハイビジョン放送で楽しんでいる。かつてのNHKのダイジェスト放送、NHK BSでの放送などなつかしく思う。天気が良くカメラの調子が良い時?(カメラは振動にやや弱いと思う)には筋肉の動きや、ギアの位置までも映し出すハイビジョンはツールの見かたも変えてしまう。フランス各地方の沿道の人々、風景、しゃれた映像もツールとハイビジョンによるところが大きい。そしてかならず紹介されるのが各地のお城と教会だ。お城も良いが、教会の鐘の音が何より良い。ヨーロッパのシンボルのひとつだと思う。日本人にはお寺の鐘がする(するような)環境を維持することが大切だとぼくは思うが、現時点ではあちらさんのほうが上だと感じる。
1989年パリでマルセイユをめざすツールを観戦していた。生ツールを観たことはないぼくにとってもっとも記憶に残るステージのひとつだ。ホテルのTVは正確な色を表示することさえ出来なかったが、南仏、そしてマルセイユからパリへ戻ってきたということも手伝って妙に興奮した。五感を使って楽しめたのはTVがボロかったこともあってだろうか。