匙
2008.05.10 Saturday | category:Objects
英国のデザイナー、ジャスパー・モリソンの著作に『A Book of Spoons』というA5サイズのかわいらしい写真集がある。スプーン、匙、レンゲ、お玉、アイスクリームディッシャー、へら、しゃもじ、計量するための、調理するための、盛るための、食べるための、金属の、木製の、西洋の、東洋のものと千差万別の姿をモノクロで晒している。それらは彼の集めたコレクションの一部だと聞いてなんとなく共感を覚える。なぜならほぼ同年代であり、好みが近かったりすることを彼の作品からぼくが勝手に感じていることによるけど。彼はインタビューなどでデザイン=設計に外れた装飾は好ましくないと言っているが、決して禁欲的なミニマリストでもなく、むしろ人柄を自然に作品へ映すところなどは今風だと思う。それが出来るのは自身の好み(デザイン)がはっきり整理されかつストックされているからだ。
彼がイタリアのALESSI社へデザインを提供しているレードルシリーズは秀逸であると思う。ただしあくまでもレードルシリーズ、ブナ材によるキッチンツールとパスタ用サービングフォークのみに限る。カトラリーやポット類など他の商品群はぼくの好みではないし、残念なことにこのレードルシリーズのような道具の美や佇まいが絶対的に不足していると思う。これはもしかすると彼が個人的に鍋より匙を好んでいることに関わるのかもしれない。