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アナログというのは手の感じひとつ
LP12 Sep 2010
LP12 Sep 2010
アナログというのは手の感じひとつで音楽の雰囲気がコロっと変わってしまう。たとえば、アームのおしりの高い低いで、音色がオープンになったりタイトになったりする。アームのセッティングの基本は水平と言うが、あるところを過ぎれば目よりも耳の方が確かになる。根元を持ってごくわずかに下げた気持ちくらいでもけっこう音が変わる。上げたか下げたか分からないくらいの調整だからどのみち耳に頼る他ないのだ。針圧しかり。このようなことがいろいろ積み重なっているのがターンテーブルという代物。万事基本通り忠実に調整した後、目ではなく耳で最終的に仕上げていく。多少の経験も必要。そこで聞くとレコード個体差による音の違いが手に取るように分かる。もっともさほど調整されていなくても音の違いは分かるものであるが。一方に質の良いターンテーブルがほど良く調整されているとする、他方廉価なものがそのままの状態であったとする、前者に再発盤のレコード、後者にファーストプレスのオリジナルをかけたらどうなるか。それは後者の方が好い場合が多いのでは。というのは元が失われていたのでは、そのうしろではどう足掻いたって補完出来ないから。そしてレコードとはそもそも失われやすいフォーマットでメディアなのだと思う。

神保町の雑居ビルに入っていたオリジナル盤のお店は煩雑で物置みたいで、玄関口から先に進めないほど中古レコードで溢れていた。その店は先ずリストで欲しい盤を店主に伝えるというシステムだった。長いリストからぱっとCarole King『Tapestry』を選ぶと何か聴きたいものはあるかと尋ねてきた。短いやり取りの後、デ・ステファノのカヴァラドッシを皮切りにあれこれとレコードをかけてくれるではないか。外は小雨が降りほかに客もなく居心地は悪くなかった。『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の英初期盤を聴いたのは初めてだった。店主は六十手前くらいに見えたが「これなんかも案外いい音なんだよ」といって、Talking Heads『Remain in Light』をかけた。NHK FM『サウンドストリート』で坂本龍一がよくかけていたが、それはとても分厚く挑発的で懐の深い良い録音だった。他にRy Cooder『Paris, Texas Original Motion Picture Soundtrack』、no synthesizers(!)時代のQueen『Sheer Heart Attack』からKiller Queen、Carpenters、Linda Ronstadtなど、いずれもそのヨロっとした装置からは信じられない音が飛び出してきていたく衝撃を受けた。十年も前のことだけど今でも良く覚えているし、そのオヤジにはとても感謝している。そして中学時代からコツコツと集た邦盤のレコードは、街の中古レコード屋にサッと消えていった。

神保町の『Tapestry』は米Ode Recordsオリジナル盤でマトリックスA面M5、B面M6というものだった。この盤から機器の音、オーディオのセッテッングからターンテーブルに関していろいろ学んだ。リファレンスの一枚ということになる。この一枚があったから、この盤が平凡なマトM5/M6だったからこそ多くを学べたのかもしれない。初級者の情熱とともに。
四年後にマト両面P1という初盤、さらに数年後には両面S1という盤も入手して神保町盤は、お役御免となった。手元の両面P1、両面M1という盤はその音色の方向性に違いがある。が、どちらもこの上ない盤には違いない。また同じマトリックスの番号の盤でも、初期のものと後期のとでは情報の質に優劣があり、コレクションの入れ替え戦となることが少なくない。そうしてJoni Mitchellの『Blue』も八年程かかって同マトで最初期の貴重なものが聴けた。

初期盤を追いかけていると初期盤には共通した特徴があることに気づく。しかしそれは初期盤のみを聴いてたのではわからない。要はプレス時期が違う盤を聴き比べてきた経験から、最初期盤の優れた音の情報の質が記憶の中で整理され系統づけられるのだから。その分かりやすい特徴の一つは音の鮮度が高いことである。そして僅差の場合には音に滋味を感じる方がより初期盤ではないだろうか。また平明に言えば優しい、情がこまやかというところか。先日Rickie Lee Jones『Pop Pop』のSHM-CDを買って手持ちのCDと聴き比べたのだが、当CDに関してはSHM-CDのほうがレコードの初期盤にあるような特徴のいくつかを示して、ほっとしたところだった。ただ微差であることに違いない。とどのつまり最高のアナログは人である。このような些細極まりないところまで聴き分ける非常に優れた聴覚を持ち、論理的にも感情的にもその記憶を保管し、必要なときには立ち上げて比較分析をするのだから。
| Toru Tachizawa | 00:12 | - | - | pookmark |
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